こんにちは、みのんです。
今回は研究室に配属されてゼミ発表や学会発表をしなければいけないのに
「研究発表をどうやって準備したらいいかわからない」
と悩んでいる学生の方々のために、
「わかりやすい研究発表をするための方法」
をお話します。
研究室に配属されるまでって、あまりプレゼンをする機会がないですよね。
しかも、「プレゼンの準備方法」を教えてくれる人ってなかなか居ません。
当然、自分もそんな親切な方は居らず、独学で試行錯誤しながらプレゼン方法を学んできました。
とはいえ、
- 国内学会で9回
- 国際学会で2回
の学会発表を経験させて頂いたおかげで、なんとなく「わかりやすい研究発表の方法」がわかってきました。
しかも、ありがたいことに
- 優秀発表賞を2回
- 日本学術振興会の特別研究員DC1にも面接経由で採用
などある程度の成果を挙げることができ、学部生の方に教えてあげられるくらいのレベルには達したのではないかと思います。
更に2回学会賞を頂き、合計4回になりました。
そこで、今回はこれまでに培ってきた「プレゼン技術」と「準備方法」を紹介していこうと思います。
それでは下記よりご覧ください。
わかりやすい研究発表をするための3つの手順
手順は大きく分けて下記の3つを繰り返せばOKです。
- 発表資料を作る
- 要点をまとめたメモを作る
- 練習と改善を繰り返す
順番に見ていきましょう。
手順① 【スライドを作る】
まずは発表資料となるスライドを作ります。
発表資料は自分が発表する時に何を話せばいいかがわかる「ヒント」を散りばめておきます。
発表資料がスライドの場合、私はいつも下記のような感じで作ります。
資料のデザインに正解はありませんが、いくつかポイントを説明します。
わかりやすい発表資料の作り方
「わかりやすい」資料を作るためには以下のポイントを抑えておきましょう。
1枚のスライドの流れは、以下の3つです。
- 主張したい内容を簡潔に1文で示す(1スライド1メッセージ)
- 主張内容に一致するように情報を入れ込む
- 生じた疑問点などを次のスライドに繋げる形で挙げる
こういった「パターン」を自分なりに決めておくとスライド作りがはかどります。
Word を使った資料でもサイズが変わるだけで基本は変わりません。
まずはこのスライド作りの基本を抑えておきましょう。
主張したい内容を簡潔に1文で示す
スライド一番上の部分ですね。
このスライドで何を主張したいかがわかるようにしましょう。
このとき、1スライド1メッセージになるように内容を絞ります。
長くなりすぎる場合は情報過多です。
スライドを複数に分けることも検討しましょう。
主張内容に一致するように情報を入れ込む
すでに主張したいこと(結論)が決まっているので、それに合わせて情報を入れていくだけでOKです。
このとき、以下のことに気をつけましょう。
- テキストは入れすぎず、大きめのフォントを使う
- 図形の位置は揃える
- グラフも詰め込みすぎず余白を作る
図形の位置を揃えたいときは、
パワーポイントであれば、位置を揃えたいテキストや図形を全て選択した状態で
図形の書式設定>整列
をクリックすることで「左揃え」「右揃え」「左右中央揃え」などのオプションを選んで整列させることが出来ます。
Mac のKeynote であれば同様に揃えたいオブジェクトを選択した状態で
フォーマット>配置
から同様の整列オプションを選ぶ事ができます。
ちなみに、今回のスライド例ではわかりやすくするために、できる限り図形やテキストを揃えるようにしていますが、あまりキレイに揃えすぎると返って見にくい場合もあるます。
各自の好みで適宜判断してください。
また、グラフの説明をテキストで加えたい時は、「吹き出し」などで入れると見やすいと思います。
生じた疑問点などを次のスライドに繋げる形で挙げる
最後に、このスライドで生じた疑問点などを示します。
こうすることで、次のスライドとのつながりがスムーズになります。
スライドを見ただけで次にどんなスライドが来るかが予想できるので、便利です。
今回のスライドであれば、「次はテキスト情報をたくさん入れたいときの話だな」とわかりますね。
これはオーディエンスにも易しい仕様になっています。
ちなみに、実際に「テキスト情報を増やしたいとき」は下記のパターンを良く使います。
プレゼンの最後のまとめスライドなどでこういったパターンをよく使います。
また、最後の部分も主張を繰り返すことで反芻してもらったり、要約を入れることでよりわかりやすく説明するなどのパターンもありです。
内容をより抽象化して「解釈」を書くこともあります。
出来れば左にイラストなどを入れた方が見やすいですが、箇条書きも余白を作って詰め込みすぎなければ、情報量を増やしつつ見やすいスライドになると思います。
発表資料を作る時の5つの注意点
続いて、上で挙げきれなかった細かい注意点をいくつか紹介しますね。
文体を統一する
例えば、上のスライドの場合、スライドの冒頭の一文は全て動詞で終わるようにしています。
もちろん、全て体言止めにしても良いですし、全て「ですます」で統一しても良いでしょう。
自分なりのルールで統一されていることが重要だと思います。
である、だったり、ですますが混在しているようなスライドは、オーディエンスが気にしてしまう場合もあるため、避けた方がいいと思います。
フォントの種類を統一する
文体同様に、フォントの種類も統一しておきましょう。
英語であればArial、日本語であれば游ゴシック、のように英語と日本語で分ける程度で統一します。
フォントサイズを極端に変えない
同じく、フォントサイズも2、3種類の使い分け程度にしておきましょう。
強調したいからと言って、極端に大きすぎるフォントが使われたりすると、かえって見にくくなります。
半角・全角などの体裁を整える
このあたりは意外と忘れがちです。
卒論や修論でも細かく指摘されると思うので、プレゼンのスライド作りの時から意識しておくと癖が付いていいと思います。
半角括弧などの前の半角スペース忘れなど、気になる人は意外と気にします。
内容に集中してもらえるように、このあたりの体裁は整えておきましょう。
色使いはシンプルに抑える
こちらも文体同様に、色はたくさん使いすぎないほうが良いかなと思います。
どこが大切なところか分かりにくくなるからです。
基本的な色は統一しておいて、強調したい箇所をアクセントカラーにして示すと効果的に見せたい部分を強調させる事が出来ます。
最近は白黒ベースで強調したいところだけ赤系統や青系統で強調するようにしています。
他にも色々な色使いを試したいという方は下記のサイトが便利です。
手順②【要点をまとめたメモを作る】
さて、資料が出来た後は手順②の【要点をまとめたメモを作る】に移ります。
このプレゼン準備の最終的な理想は、発表資料を見た瞬間に何を話せばいいかが思いつく状態です。
慣れてくると、先ほど紹介してきた
- 主張したい内容を簡潔に1文で示す(1スライド1メッセージ)
- 主張内容に一致するように情報を入れ込む
- 生じた疑問点などを次のスライドに繋げる形で挙げる
この3つを守れていれば資料が出来上がった段階で、ある程度発表できるようになります。
ですが、慣れない内はそうもいかず、
「あれ、このスライドなんだっけ・・・?」
とグダグダな発表になりがちです。
かといって、情報を詰め込みすぎても見にくくなります。
そこで、このスライドに「含めきれない情報」を補完するのが、手順②の【要点メモ】です。
この「メモ」は以下の3つのポイントを抑えておきましょう。
- スライド1枚ごとに1枚の要点メモを作る
- 箇条書きでシンプルにまとめる
- スライドに「含めきれない情報」を入れる
スライド1枚ごとに1枚の要点メモを作る
スライド形式であれば「スライド1枚」ごとに要点メモを作ります。
ジャーナルクラブなどであれば、印刷した論文の「Figure 1」つごとに余白にメモを書き殴っています。
箇条書きでシンプルにまとめる
このときのメモは「箇条書き」等でシンプルにまとめたもので良いと思います。
慣れてくれば、順番も気にせず気づいた事や重要だと思ったポイントをとにかく書き殴っておけばOKです。
最初はそれでは発表の時にきついと思うので、話したい内容の順番を整理しておくと良いでしょう。
話し言葉できれいな原稿を作ることは避けた方が良いと思います。
理由は手順③で説明します。
スライドに「入らなかった情報」を入れる
この要点メモの目的はスライドを見ても内容を思い出せないときの保管的役割を果たして貰うことです。
スライドに書いてあることと同じ事を書いても意味がありません。
メモとして残しておきたいけど、スライドに載せると見にくくなる、といった情報を残しておきましょう。
手順③ 【練習と改善を繰り返す】
手順②の「要点メモ」まで作ったら、手順③の【練習と改善を繰り返す】を始めます。
ここでは、手順①と②で作成した以下の2つを用意すればOKです。
① 発表資料
② スライド1枚1枚に対応した要点メモ
要点メモを一通り作り終わっていれば、ジャーナルクラブであれ、自分の研究発表であれある程度は理解が進んでいるはずです。
そこでいきなり①発表資料を見ながら、発表練習してみてください。
「え、原稿も無しでいきなり?」
と思うかもしれませんが、その通りです。
やってみると、①の発表資料だけでは「ここは何だっけ?」となるポイントが出るはずです。
そのときは、②の要点メモを見返しましょう。
そこで「ああ、そうだった」となるのであれば、それで練習を続けてください。
もし、②を見てもよく分からない場合は、①と②のどちらか、または両方に情報が不足している可能性が高いです。
手順①と②に戻って、情報を加筆修正して、再度練習してください。
最初は誰でも、間違いなくグダグダな発表になりますが、最終的には
スライドを見た瞬間、グラフを見た瞬間に「何を話せば良いか」が瞬時に浮かぶ
この手順③ではこの形を目指してください。
原稿がないと話せないという方は【要点メモに番号を振る】
「原稿がないと全く話せない」という方は、要点メモの箇条書きに番号を振るなどして、話す順番を決めて対処してください。
ここでも、手順②でもお伝えしてように「話し言葉で原稿を作る」のは我慢してください。
理由は以下の3つです。
- 修正に時間が掛かる
- 棒読みになり重要なところがわかりにくくなる
- 原稿を読んでいることが「明らかに」わかってしまう
練習してみるとわかりますが、原稿を作っても変えたいところが出てきます。
それを毎回修正するのは非常に手間です。
また、話し言葉で文章として原稿を作ると、原稿に引っ張られて、音読するような形になりがちです。
手順②で「箇条書きで要点をまとめたメモ」程度に留めておくように指示したのはこういった理由です。
練習するときに気をつける10のポイント
実際に発表練習をするときに、気をつけて欲しいポイントがいくつかあります。
基本的には、本番を想定して練習します。
声に出して練習する
練習するときは必ず「声に出して」練習してください。
声に出して発表してみると、些細な違和感にも気づきやすくなります。
例えば、スライドとスライドの間であったり、Figure と Figure の間でスムーズに話せないことに気づく、などがあります。
そういった時はスライドの構成に問題があるか、自分の話す内容に問題があります。
スムーズに繋げられるように修正しましょう。
次のスライドやFigureに移った時にスムーズに説明を開始できないのは、流れを完全に理解していなかったり、そもそも何を言えば良いか理解できていないのが原因です。
そのときは、そのスライドやFiguresについて復習しておきましょう。
話す内容がストーリーとしてまとまっているかを確認する
論文発表であれ自分の研究発表であれ、一連の流れとして繋がっていることが重要です。
スライド一枚一枚が独立しているように見えたり、Figure 同士の関連が全く見えなかったら、全体としてそのプレゼンの意味はほとんど分からなくなってしまいます。
「場面は変わって」「話題は変わりますが」
といったフレーズができるだけ使わずに発表したいところです。
もちろん、複数のテーマを扱っている場合は、これに限りませんが、少なくとも1つのテーマに関してはきちんと「ストーリー」になっているかを意識しましょう。
「つなぎ言葉不要」のプレゼンを目指す
「結果です」「結論です」「Figure 3 です」
流れが自然であれば、こうした「つなぎ言葉」は自然と不要になります。
流れがスムーズでない、突然出てくる印象があるからこそ、無理やり
「このスライドはこうだよ」と話すことで無理やり繋げているわけです。
基本的に、1つのプレゼンは1本道で描かれる1つのストーリーになっているべきであり、小説のような紆余曲折はそれほど必要ありません。
もちろん、あえて紆余曲折を経て結論へと収束するプレゼンも非常に面白いです。
ですが、これはかなり技術を必要とする方法ですし、
そもそも1つの筋が通ったストーリーを作れずして、そうした「応用」は出来ません。
まずは基本となる1本道のストーリーになった「流れるような発表」を目指しましょう。
「えー」を飲み込む
プレゼンの時に「間」を「えー」とかで繋ぐのが癖になっている方は、沈黙を恐れているのかなと思うのですが、たぶん、オーディエンスは思ったより気にしていません。むしろ、「えー」が頻出するとそっちが気になります。沈黙は注意を引く効果もあるので、「えー」が出そうになったら飲み込みましょう
間を繋ぐための「えー」は基本的に不要です。
これをなくすには意識し続けるしかないので、日頃のプレゼンから意識して「えー」を飲み込むようにしておくと良いでしょう。
ゆっくり話す
プレゼンはゆっくり話すほうが良いと思います。
ラボメンバーが慣れ親しんだ自分の研究発表ならまだしも、ジャーナルクラブなどの誰もが初見の発表は特に注意すべきです。
自分は何度も読み込んでいるので説明がスムーズに「なりすぎ」になりますが、相手は初見です。
「淀みのない発表」はスムーズな発表を表す意味で使われますが、スムーズすぎる発表は時にオーディエンスを置き去りにしてしまいます。
それを意識して話すスピードを調整することを意識してください。
「間(ま)」を取る
話すスピードだけでなく、スライドとスライドの間だったり、Figure と Figure の間だったりでも一呼吸置きましょう。
いくら話すスピードがゆっくりでも、次々と場面が変わっていってはオーディエンスはついてません。
例えば、資料を配って発表しているのであれば、ページを裏返すタイミングで、オーディエンスの方々がなかなかページを裏返さなければ、それは発表が早すぎたということです。
そういった様子を見ながらテンポを調整できるようになったらかなり上級者の領域ですね。
略語は意味も含めて繰り返し説明する
略語は一度説明したらそれで終わり、
という方が多い印象ですが、聞く側からすると、1回では覚えられないことが多いです。
そうなると、略語が出てくる度に、「え、これ何だっけ?」と思考が一時停止します。
こうした事態は出来れば避けたいので、最初の数回は繰り返し略語について説明したほうがいいです。
そのときもきっちりスペルアウトなどして、「なぜその略語になるか」を説明してあげると親切です。
例えば、我々は食餌誘導性肥満(DIO)という略語を使うことがあります。
これだけだと一瞬「?」となりますが、
「Diet-Induced Obesity の頭文字をとって”DIO”」です。
と説明してあげるとすんなり理解できますね。
発表を録音して聞く
時々、自分の発表をスマホアプリなどで録音して聞いてみましょう。
実際に聞いてみると、思ったより注意したポイントが出来ていないことに気づきます。
プレゼンの天才として有名なスティーブ・ジョブズも、練習するときは自分のプレゼンを動画で撮影して改善していたという事ですから、かなり有効な方法だと思われます。
実際、自分でも時々確認すると、「意外と早口だからもっとゆっくり話した方がいいな」「ちょっと声が小さいからもっと声を張っていいな」
など改善点を見つけることができます。
解釈を使う
「解釈」は認知負荷を下げる上でとても大切です。
解釈とはざっくりいうと「つまり、どういうこと?」をズバッと言うことだと思っています。
論文と違って何度も読み返すことが出来ないプレゼン発表では、結果だけを載せたスライドは見ていて非常に苦しいです。
ちょっとわかりにくいので、具体例を出しますね。
- 例えば、我々の体は血糖値が下がったときに「糖新生」をすることで、グルコースを作り出して血糖値を保ちます。
- このとき、肝臓はグルコースの塊であるグリコーゲンを分解してグルコースを作り、全身に配りますが、筋肉では作ったグリコーゲンがあるにも関わらず、グルコースを全身に分配せず、自分でしか使いません。
これは実はちょっと複雑な話で、
グリコーゲンはいきなりグルコースになるわけではなく、グルコース-6-リン酸と呼ばれる、リン酸基がついた状態でできあがります。
グルコースはリン酸基が付いた状態では血中に出ることが出来ないので、血中に放出して全身に配るためには、リン酸基という邪魔者を取り除く必要があります。
肝臓はこのグルコース-6-リン酸のリン酸基を取り除く酵素を持っているんですが、なんと筋肉は持っていないんですよね。
この理由から、筋肉ではグルコースとして血中に出すことが出来ないので自分で使う、ということになります。
これを、
肝臓はグルコースを皆に配る【優しい臓器】で、筋肉は全部自分で使う【自己中な臓器】
といった解釈をしてあげます。
この解釈が本当に正しいかは別として、こういった意味づけがあると、理解しやすいし覚えやすいですよね。
私の場合は、スライドであれば1枚ずつ、ジャーナルクラブであれば Figure 1つごとにメモのような形で1文で「結局何が言いたいのか」を簡潔にメモしておきます。
箇条書きのような形でいくつか挙げてもいいでしょう。
それを口頭でも良いので説明してあげると親切ですね。
練習しながら質問対策をする
声に出して練習していると、所々で疑問点が浮かんできます。
そうした疑問は放置せずにメモしておきましょう。
練習に疲れたタイミングや、落ち着いたタイミングでその疑問点を調べておきます。
あとは、「予想される質問リスト」を作るのも有効です。
それに対応して、論文を探して読んでおくといいでしょう。
プレゼンで一番大切な事
結論は「練習と改善を繰り返す」ことです。
スライドの作り方にせよ、話方にせよ、プレゼンの度に何かしらの改善点を見つけ、それを試行錯誤して改善していく事が一番大切です。
日々、テレビドラマで見る演技の上手な俳優さんは台本を元にしているはずなのに「自然」ですよね。
あれはとにかく「練習と改善」を繰り返しているからです。
初見の台本を使ってもある程度スラスラ自然に話せる俳優さんも居られるそうです。
あれは、それまでに何十回、何百回、何千回と練習を繰り返してお陰で出来る芸当です。
つまり、毎回のプレゼンで練習を繰り返しておくと、長い目で見るとどんどん練習に必要な時間を減らすことが出来ると言うことです。
それでは、今回は以上になります。
練習と改善を繰り返してプレゼン技術を磨いていきましょう。
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