【体験談】博士課程を経験して感じたメリット・デメリット【修士との比較】

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研究

こんにちは、みのんです。

博士進学を迷う方から博士課程のメリット・デメリットをよく聞かれるため、その回答としてこのようなツイートをしました。

今回はこの点に関して、本記事でもう少し深掘りしておこうと思います。

就活に特化したお話や、私の博士進学の経緯については以下の過去記事に纏めてありますので、詳しく知りたい方はそちらをご覧ください。

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博士課程に進学するメリット・デメリット【修士との比較】

早速ですが、それぞれ感じた事を纏めていきます。

僕は博士卒としてアカデミアではなく企業就職を決めたため、対象としては「博士課程を終えた後に企業就職を考えている修士以下の方」になるかと思います。

メリット

まずは良い面から見ていきましょう。

後輩のマネジメント経験が出来た

学年が必然的に上がるので、後輩指導を否が応でもする事になります。

もちろん、ラボ方針にもよるので必ずしもという訳ではありませんが、確率は高いでしょう。

自分の成果だけでなく、後輩も上手く結果を出せるように努力をする過程は経験としてもの凄く貴重なものだったと思います。

僕が普段ツイートしている内容の大半が、後輩指導の過程で得られた気づきであることもその証拠だと思います。

また、このマネジメント経験が就活で最も評価が高かった点からも、大きな手応えを感じました。

博士採用の意欲がある会社の人事の方々のお話を伺っていると、博士は自分の仕事だけでなく、周りを動かす力も期待しているという意見が多かったです。

僕の場合ですが専門性を除けば、博士過程で得られた最大のメリットはもしかするとマネジメントスキルだったかもしれません。

就活で修士学生との差別化がしやすかった

まず、僕が修士で就活をしていた時と比較しても研究重視の面接では特にやりやすかった印象です。

博士課程での就活も修士の方々と同じ枠組みでの採用だったため、修士の方々と比較される事が多く、

少なくとも研究職の就活に限れば、修士の方に比べると得ている研究データ量や質、業績、発表経験が明らかに多いためか、非常に差別化しやすい環境だったと感じます。

実際に既に企業で働かれている博士持ちの先輩方のお話を伺っていると、博士号を持っている社員はロジック面がよりしっかりしているとの声を良く聞きました。

また、過去にもツイートしたように、博士過程では専門性以外にもたくさんの事を学べます。

特に研究計画や成果を学会および論文でまとめる過程は、ボスや査読者を論理的に納得させる必要があるため、経験として論理的な思考が身についていくのだと思います。

修士卒でも3年間で同じような経験をすれば、博士号は無関係なのでは?という疑問もありましたが、修士卒での入社3年で博士課程の3年間ほど多くの経験をさせてもらえる事は意外と少ないとのお話も伺いました (大手数社の方々に伺った話に過ぎないため、会社にもよると思います)。

日中の時間も好きな勉強が出来た

これは正直ラボの雰囲気にも左右されるとは思いますが、社会人の方々に比べるとまだ学生の身分である博士課程は日中も自分の好きなように時間を使えるのが大きなメリットでした。

例えば下記のTOIECやPythonの勉強は日中に時間を見繕ってはコツコツと行った成果です。

TOEICは博士論文を執筆する隙間時間を使って勉強していました。

Pythonはちょうど研究でも使う予定があったので、一石二鳥という感じでしたね。

メンタルが強くなった

同期や年齢の近い後輩がどんどん卒業していくことで意思疎通の難易度が上がる中、限られた期間で成果を挙げる必要がある博士課程では相当メンタルが鍛えられました。

ちなみにこの「メンタルの強さ」とは「理不尽な処遇に黙って耐え抜く我慢強さや打たれ強さ」の意味ではありません。

言うべき事はきちんと主張したり、上手く休息をとってメンタル面への悪影響を未然に防ぐアンガーマネジメント、ストレスマネジメント的な意味合いが強かったと思います。

博士の同期と話している共感してもらえることも多いので、もしかすると多くの博士学生が感じる事かもしれません。

休み方が上手くなった

メンタル面の健全な向上は適切な休息の仕方とセットであるべきだと思います。

下記のような健康管理のノウハウは自分でルール等を決めて徹底したことで修士の頃に比べて格段に休み方が上手くなりました。

「上手く休むのも能力の1つ」と気づけたのが非常に大きかったかなと思います。

専門性と博士号が手に入る

当たり前の事かもしれませんが、博士課程を無事終えれば専門性に付随した博士号を得られます。

仮に修士卒の3年間で全く同じ経験が出来ると仮定しても、博士課程では博士号が得られる明確な差別化ポイントがあります。

日本国内で博士号がどれほど肩書きとして重要かどうかはわかりませんが、少なくとも企業研究者や大学の先生からは

  • (特に製薬・化学メーカーで)海外との仕事をするには博士号の有無で相手の態度がかなり変わる
  • (大学の先生目線で)共同研究先の企業研究者が博士号の有無で見る目は少し変わってしまう

などの意見を頂きました。

こういった話が少なからずある事を考えると博士号自体のメリットも大きいのではないかと思います。

実際、修士卒で企業研究者になり「博士号が必要になった or 欲しくなった」という話をされる先輩も何人かおられます。

また、博士号があれば(実現可能かどうかはさておき)民間が合わなければ大学に戻るという選択肢もあり得る、という点も重要かと感じました。

デメリット

メリットばかり挙げるとバランスが悪いのでデメリットについても纏めておきます。

とにかく不安が大きい

博士課程での最大の問題は孤独感や不安感が強く現れやすいことではないかと思います。

同期はほぼ居なくなりますし、博士課程に進む学生の母数自体が少ないため、その独特の不安感を理解してくれる人が少ないという点が博士課程の学生が病みやすい環境になってしまっています。

そんな環境の限られた数年で成果を出す必要があるため、メンタル面への付加はさらに強くなります。

孤独感から来るメンタル面でのデメリットは博士課程最大の問題といっても過言ではないと思います。

もし博士課程に進むことを考えている方はできるだけ幅広い年齢層、環境の方と交流を持って絶やさないようにする努力をする事をオススメします。

博士で企業就活をする学生が少なく情報が得づらい

就活は誰もが不安を感じる要素だと思いますが、博士卒で企業就職を目指す方が少ない点も問題です。

実際、僕のラボでは博士卒で企業就職をされた方は皆無に等しく情報収集に苦労しました。

学会や友人伝い等で情報集めをする努力が修士以上に必要になる場面が多いです。

僕はたまたま同期で卒業した友人伝いで企業で働かれている博士研究員の方を紹介して頂けたため、ESや面接、企業情報に関してたくさんのアドバイスを頂く事ができましたが、自分に近い先輩の人脈だけでは中々情報集めが難しいでしょう。

研究と就活の両立が難しい

博士課程では大学や学部によって異なりますが、限られた数年で一定数の論文を査読付き英文雑誌に通す必要があります。

そういったプレッシャーや制約を抱えながら就活に時間を割くのは至難の業です。

さらに、良くも悪くも博士学生は先生や後輩から頼られる機会が増えます。

僕の場合は断ったり、他の人が指導できるように教えた上で上手く分散する努力をしていたとはいえ、それなりに負担は大きかったです。

自分1人だけではなく、後輩の指導も同時並行で行いながら実験をして、論文を書いて、さらに就活をするのはかなりキツいです。

就活が始まるD2の冬前後までに規定数の論文を満たす、もしくは見込みを立てておくことがベターかと思います。

まとめ

博士課程のメリットは専門性に付随した博士号の獲得、そしてその過程で身につく課題解決能力やマネジメント能力の向上がメインだと思います。

博士号そのものの魅力はともかく、後者のスキルは就活でも大いに評価して頂きました。

デメリットは主にメンタル面での不安感等が大きいと思います。とにかく交流の幅を広げ、1つのコミュニティに留まらずにコミュニケーションを絶やさない努力が必要不可欠になります。

オススメ書籍

最後に1冊だけ、書籍を紹介しておきます。

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講談社サイエンティフィク
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以前Twitterでは論文執筆に関する書籍として紹介しましたが、博士課程を乗り切る上での心構え的な側面もぜひ注目して読んで頂きたいです。

この書籍は博士友人の3人で購入し、この書籍の内容に従って毎週3人で進捗の報告会を行っています。

異なるラボ間のコミュニケーションに繋がると思うのでぜひ読んで活用してください。

この記事が博士進学を迷っている方の参考になれば幸いです。

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