こんにちは、みのんです。
今回の記事は、
「後輩を指導する事になったけど、どうやって指導したらいいかわからない」
と困っている方向けです。
この話題に関して、以前こんなツイートをしました。
大学は研究者として優秀な方は多いですが、「指導者」としての側面を持ち合わせた方は非常に少ない印象。だからこそ、指導者としても優秀だなあと思う先生が居られるラボは目立って雰囲気が良く、学生が主体的に研究をしたり、論文を書く仕組み作りが出来ていて、学生の幸福度が非常に高い印象です。
大学では「指導の方法」なんてものは誰も教えてくれません。
厳しい指導をする先生はたくさん居られるかもしれませんが、学生は本当に幸せか?と言われるとそうではない例もある気がします。
教育で難しいのは、指導がただの「強要」になってしまう場合があることです。
学生が成長できて、かつ幸福度を高く保つ
これを目指すことが理想ではないかと思っています。
自分は後輩が成長していく姿を見るのがとても好きだったため、
「どうやったら幸福度を高く保ちながら、後輩たちに成長してもらえるだろうか?」
と考えながら指導方法について試行錯誤してきました。
誰しも始めは「指導を受ける立場」ですが、立場が上がることで「指導をする側」に回ることになります。
そんな「指導をする側」になったけど、「どうやったら良いかわからない」と困っている方々の助けになればと思います。
それでは下記よりご覧ください。
【本質】指導者が出来ることは「機会を与える事」だけ
まず、大前提として、指導者がする事の本質は
「機会」を与える
事であると理解する必要があります。
“馬を水辺に連れて行くことは出来ても、水を飲ませることは出来ない”
この諺は
「他人に機会を与えることは出来るが、その機会を活かすかどうかは本人次第」
という重要な示唆を含んでいます。これを理解している先生と、与えられた機会を素直に活かせる学生がいる研究室はきっともの凄く強い。
つまり、
アドバイスをする事はできても、それを受け入れて実際に行動するかどうかは「本人次第」であり、指導者はそれ以上関わる事はできない
という事です。
もちろん、罰則なり、しつこく指導して強要することも出来ますが、
それは「指導」ではなく、ただの「支配」です。
なので、私のスタイルとしては、基本的にはアドバイスをするだけです。
モチベーションを上げて貰うためにあれやこれやを言うこともありますが、それ以上は何もしません。
もちろん、卒論や修論の執筆、それらを纏めるために必要な実験など、最低限やらなければいけない事をやらない学生には何らかのペナルティーがあって然るべき。
それ以外の事に関しては、やる気がない学生にいくらアドバイスをしようが、何も行動に移さないかもしれません。
でも、それでいいと思っています。
教育者がすることは「指導」であって、「支配」ではないからです。
これを理解した上で、やる気のある方、優秀な方が与えられた「機会」を最大限に活かしてもらうための環境作りをすることが指導の本質だと思っています。
この環境作りに関して、もう少し掘り下げていきます。
【重要】心理的安全性を確保してあげる
「環境を整える」というと色々な定義が考えられそうですが、指導者が最優先で整備すべきは「心理的安全性」です。
- 先輩や先生がいつもイライラしていて怖い
- 先輩や先生がいつも忙しそうで質問しづらい
- こんな些細なことで質問していいのかなと不安になる
指導を受ける立場として、こんな経験はないでしょうか?
こうした「心理的安全性」が確保されていない環境では、不安感から生産性も大きく下がります。
実際に、Google の研究によると、集団のパフォーマンスを最大にするために必要な要素は「心理的安全性の確保」だったそうです。
心理的安全性とは、
対人関係においてリスクのある行動をしてもこのチームでは安全であるという、チームメンバーによって共有された考え
https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/steps/foster-psychological-safety/
と定義されています。
もっと具体的に言うと、心理的安全性が確保されていない状態とは
- ミスをすると強く非難される
- 自分の考えを話してもすぐに否定される
- 上司はいつもイライラしていて、いつも忙しそう
- 質問しても「そんなことも知らないのか?」と馬鹿にされる
などが考えられます。
こんな状態では、アイデアがあっても挑戦できませんし、問題があっても相談しづらいですから、チームとしての生産性が下がるのも目に見えていますね。
なので、指導者が一番に大切にすべきは「心理的安全性」を確保するための「環境作り」だというわけです。
「心理的安全性」を確保するためには6つのポイントを押さえる
勉強する
当たり前ですが、上の立場に立つ方は勉強しなければなりません。
部下が質問したくても、「この人に聞いてもな・・・」と思われては上司の意味がありませんね。
「この人に聞けば何か道が開けるかもしれない」と思わせるような上司になれるように、勉強は必須です。
否定しない
自分の考えを否定され続けるのは辛いですね。
せっかくアイデアが浮かんでも
どうせ全部否定される
と思われては、相談にも行きづらくなり、お互いにとって大きな機会の損失です。
最初から上司を唸らせるようなアイデアを持ってこれる人はごくわずかです。
否定するにしても、まずは「自分で考えてきた事」を褒めて上げるなり「肯定」してあげるべきです。
持ってきたアイデアが稚拙だったとしても、
- なぜそのアイデアが駄目なのか
- どうしたらもっと良くなるか
- 代わりにどんな良いアイデアがあるか
などを考えてあげるような姿勢が重要です。
馬鹿にしない
同様に、質問内容やその部下が持っているアイデアを馬鹿にしたりするのも厳禁です。
些細な質問だとしても、馬鹿にせず答えてあげるべきです。
あまりに初歩的な質問だと思った場合でも、決して馬鹿にせず教えて上げた後に
「○○を読んで勉強しておこう」
「この本を読むと良い」
など、どうしたら
「初歩的な質問をせずに済むような知識を付けてあげられるか」
を考えてあげるべきです。
ミスを許容する
人間誰しもが失敗します。
間違いなく、失敗しない人はいません。
むしろ優秀な人ほど、過去にたくさんの失敗をしているはずです。
ミスを強く指摘され続けると、ミスを極端に恐れて視野が狭くなったり、逆にミスが増えたりします。
さらには、ミスをしても報告せず、ミスを隠すようになります。
これでは改善の機会も得られませんね。
「反省を促すために強くミスを責める」
と考える方も居られるかもしれませんが、大抵の人は失敗をした時点で自分で十分反省しています。
それに追い打ちを掛ける必要はありません。
指導者がしてあげることは
- どうしたら次は予防できるか
を一緒に考えてあげることです。
こうしたミスが許容される環境では、「失敗しても大丈夫」という安心感からのびのび行動できるのでミスは減っていきますし、自浄作用でどんどん改善されていきます。
さらには多少はリスクの高い事にもチャレンジする姿勢が生まれるため、総合的に見るとメリットの方が圧倒的に大きいでしょう。
意義を与えてあげる
なぜそれをやるのか?
を教えてくれる人って案外少ないです。
「何をするのか」の指示は与えても、
- なぜそれをやるのか?
- それをやるとどんな「良いこと」があるのか
などのメリットや理由を教えてくれる方は意外と少ないんです。
「なんでこれをやるんだろう・・・」と思い始めると不安感や疑問が生まれて集中できません。
なぜそれをやるのか?といった意義を与えてあげることは大切です。
話掛けやすい雰囲気を作る
後輩や部下からすると上司はかなり恐れ多いものです。
話掛けるのに勇気がいる関係は、円滑なコミュニケーションの妨げになりかねません。
これに対処するための自分が実践している一例が以下のツイートです。
学部生からすると院生や先生は想像以上に恐れ多かったりする。だからこそ上の立場から積極的に声を掛けてあげることが大切だと思っていて、特に「優しい声で」「笑顔で」「頻度を多く」が重要かなと思います。1回1回はほんの1分程度で良いので安心できる雰囲気で回数を重ねると、かなり雪解けが進む
自分が学部生だったころ、先輩や先生から気さくに声を掛けて頂くのはかなり嬉しかった記憶があります。
良く休みましょう
上記のポイントが大切なのは頭でわかっていても、どうしても実践出来ないときがあります。
それは、自分が弱っている時です。
睡眠不足だったり、仕事がうまくいっていなかったりするときは周りに気を遣う余裕もなくなりますからね。
とにかくまずはゆっくり休みましょう。
休息に関しては以下の記事も参考にしてください。
加えて、自分がうまくいっていないときに、上で挙げたポイントをうまく出来なくても自分を責めすぎないことです。
【仕組み】を作る
そもそも、何でもかんでも自分で全ての面倒を見るのは不可能です。
特に、先ほどのような自分に余裕がないときに負担が大きいです。
だからこそ、
自分が何もしなくても、うまく回る【仕組み】
が大切になります。
例えば、最近でいえば、下記のような内容がうまく出来た【仕組み】だなあと思いました。
准教授が
・1週間に指定論文を1本読む
・読んだら共有ドライブに要約メモ
・わからなかったら院生に聞く
というルールを学部生に課していて、コンスタントに先生指定の良質な論文を読んで、アウトプットもある上に、後輩に格好つけたい院生も論文を読み込むことになるので教育的だなあと感心しました
この仕組みは学生同士が教え合うことになるので、極論、自分が手出しする必要はありません。
また、手前味噌ですが
「5分調べて分からなかったら聞きにおいで」
もお互いが幸せになれる「仕組み」を作る魔法の言葉です。
「5分調べて分からなかったらすぐに聞きにおいで」は、気軽に質問出来る「心理的安全性」を確保しつつも「調べる癖」を付けて貰える魔法の言葉。大概は調べれば解決する事に気づいて貰える上、分からずとも予備知識が入った状態で聞きにくるので理解が格段に速く、お互い幸せになれるのでオススメです
お互いが幸せになれる方法だと思いますので、ぜひ試してみてください。
まとめ
以上、「指導者の心得」を紹介しました。
より詳しく学びたいと言う方は関連する書籍を読んでおくと良いです。
人間関係の原則として定番の書籍である、「人を動かす」がオススメです。
実話をもとにした具体例とともに巧みに人間関係を円滑に保つための方法が記載されています。
指導は人間関係の延長ですし、今でも何度も読み返す学ぶところだらけの本です。
文庫本が出ていて700円ほどで買えるのでケチらず購入することをオススメします。
また、漫画で解説された形も売られています。
要点がうまくまとめられていて見やすいです。
本は苦手、という方はこちらから入っても良いと思います。
指導者である「あなた」が相手を評価している一方で、相手もまた「あなた」のことを評価しています。
決して横柄になることなく、初心を忘れずに「教育」に関わりましょう。
コメント
突然のコメント失礼いたします。
博士課程2年のものですが、後輩指導で頭を悩ませていまして、ネットを漁っていた際こちらのブログにたどり着きました。
後輩指導で気をつけるべき点に加え、それらを行うにあたり自分が十分に休息をとることが重要と、非常に大切ですが忘れやすいことも書かれていて、大変分かりやすく、また、納得できすぎる内容で、ついコメントをしてしまいました。
特に、「5分調べて分からなかったら聞きにおいで」に感動しました。
私の研究室も博士課程が一人で、最近、何か質問をされるとつい一つ一つに答えてしまって、想像以上に時間が過ぎるという塵が積もりに積もって、自分のことに時間をさけなくなりがちだったので…
こちらの記事を読んで、この環境を生かせるよう対策をとりながら、きちんと自分の研究を頑張りたいと、再び思えました。
ありがとうございます。。。
お互いが幸せになれる仕組みを作っていきたいですよね。
他の記事も楽しく読ませていただいています!
ありがとうございます!
大変嬉しいコメント頂きありがとうございます。博士課程にいると何かと頼られがちで嬉しい反面、大変なこともありますよね。お体大切になさって研究を楽しめることを願っています。コメント頂きこれからの執筆活動の励みにもなりました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。