こんにちは、みのんです! (@min0nmin0n)
博士後期課程2年目 (2019年5月現在) で、バイオ系の研究室で研究をしています。
この記事では平成30年度に日本学術振興会の特別研究員DC1に面接を経て採択されるまでに私が実際にやったことを紹介します。
特別研究員制度とは
「特別研究員」制度は優れた若手研究者に、その研究生活の初期において、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与えることにより、我が国の学術研究の将来を担う創造性に富んだ研究者の養成・確保に資することを目的として、大学院博士課程在学者及び大学院博士課程修了者等で、優れた研究能力を有し、大学その他の研究機関で研究に専念することを希望する者を「特別研究員」に採用し、研究奨励金を支給する制度です。
日本学術振興会HPより引用
この制度で採用された学生は月に20万円の生活費に加え、およそ年間100万円の研究費を頂けます。
DC1で採択されれば3年間、DC2で採択されれば2年間この額をもらうことができます。
つまり、DC1に採用されれば生活費として20*12*3=720万円、研究費として100*3=300万円の合計約1000万円もの資金を得ることができます。
これだけ条件の良い奨学金は他にはなかなかないので、博士課程に進む方は申請するに越したことはないでしょう。
申請時は論文はゼロでしたが、かなり申請書を工夫して作成したおかげか、なんとか面接経由でDC1にして頂きました。
私自身面接を受けた人の情報がなかなか無くて苦労したので、実際の体験談はかなり参考になるかと思います
同じことを書いても仕方がないので、出来るだけ他のサイトや書籍には書いていない情報を書いていきます。
これほど重要な学振の採択を決めるのは以下で紹介するたった数ページの申請書です。
- 書類構成 (2018年DC1申請時)
- 【追記】 書類構成について(2020年5月2日)
- 【追記】 書類構成について(2021年4月20日)
- 相手 (審査員) を知る
- 申請書の項目に従って書く
- 見出しや強調はゴシック体、本文は明朝体で書く
- 余白を使う
- 見出しと本文でインデントを変える
- フォントサイズは10.5ポイント以上を基本にする
- 冒頭には要約を入れる〜最初の1ページが勝負を決める
- 重要な箇所は太字や下線でハイライトする
- 数字を具体的に記述する
- 論理破綻をなくす
- なぜその研究が重要なのかを明確にする
- 研究の独創性を伝える
- 計画がうまく行かなかった時のバックアッププランも記述する
- 自己評価もオリジナリティを追求する
- イラストを活用する
- 同期、後輩、先生など他人を巻き込んで批評してもらう
- 何度も、徹底的に修正する
- 申請する領域を選ぶ
- まとめー申請書が完成した後のチェックリスト
- 面接免除の割合と面接合格率
- 面接の対策方法
- よくある質問
- 学部生が今からできること
- まとめ
書類構成 (2018年DC1申請時)
- 申請者情報
- 現在までの研究状況:A4用紙1.5枚
- これからの研究計画
(1)これからの研究計画:A4用紙0.5枚
(2)研究目的・内容:A4用紙1枚
(3)研究の特色・独創的な点:A4用紙0.5枚
(4)年次計画:A4用紙0.8枚
(5)人権の保護及び法令等の遵守への対応 - 研究業績:A4用紙1枚
- 自己評価
①研究職を志望する動機、目指す研究者像、自己の長所等
②自己評価
【追記】 書類構成について(2020年5月2日)
書類構成が2021年申請分のものから若干変更されたようです。
お間違えのないように学振HPをしっかり確認しましょう。
【追記】 書類構成について(2021年4月20日)
2022年分申請から更に構成が「大幅に」変わりました。
とはいえ、意識すること自体はそれほど変わりません。
本記事で記載している方法論は変わらず通用します。
構成の変化はしっかりと確認した上で望んでください。
学振申請書作成の工夫ポイント
相手 (審査員) を知る
意外にみなさん意識していませんが、とても重要なポイントです。
まずは自分の申請書を見てもらう審査員のことを想像しましょう。
申請書を評価するのは自分ではなく審査員です。これを肝に銘じましょう。
審査員のことを考慮しない申請書は、相手にとってわかりにくく、独りよがりなものになってしまいます。
申請する我々にとってもはタスク最上位に入るくらい重要な選考ですが、審査員にとってもそうとは限りません。
実際に、私が申請書を作成する時に想像した審査員の姿はこんな感じです。
- 審査員は忙しい
- 審査員は一人で何人もの申請書を審査する
- 審査員は時間が無い
- 審査員は申請書一つにつき数分で評価を下す
- 審査員は評価するにあたって正当化できる理由が欲しい
彼らにとっては数ある仕事の中の一つに過ぎない、という感覚の人がほとんどでしょう。
中には全力で細かく申請書を読んで審査してくれる人もいるかもしれませんが、おそらく大半の人が出来るだけ手早く終わらせようとするのではないでしょうか。
ぱっと見の印象、業績だけで決めてしまう人も中にはいるかもしれません。
「そんな事があっていいのか」
と思うかもしれませんが、楽観視してはいられません。
最悪の状況を想定して申請書を作るほうが良いでしょう。
上で挙げた審査員の姿をイメージしながら申請書を作れば、どういった部分に気をつけるべきかが見えてきます。
ここからはより具体的に説明していきます。
申請書の項目に従って書く
基本的なことですが、指定された項目に従って書きましょう。
公開はまだできないのですが私の書類構成の一部です。いま見返すと少し項目とずれてますね・・・。
周りにも(私も含めて・・・)項目に従わなくてもDC1に通っている人も普通にいました。
ですので絶対というわけではないと思いますが、
同じレベルの申請書のどちらかを選ぶときに、Aは項目通りだが、Bはそうでない、という場合にAを選ぶ可能性もありますよね。
内容以外の未然に防げる部分で落とされてはあまりにももったいないので、ルールには基本的に従う方が無難でしょう。
審査員が項目に従って採点している可能性もあるので、審査員目線で見ても優しいですよね。
見出しや強調はゴシック体、本文は明朝体で書く
このように輪郭がハッキリしたゴシック体と柔らかい印象を与える明朝体を効果的に使い分けると全体的に見た目がすっきりします。
フォント選び (Macの場合)
ゴシック体 → ヒラギノ角ゴ Pro
明朝体 → ヒラギノ明朝 Pro
という本来有料であるフォントをデフォルトで使えるのでこれらがオススメです。
フォント選び (Windowsの場合)
ゴシック体 → Capela
明朝体 → 游明朝体
ヒラギノは有料なので上記の2つがおすすめです。どちらもMacのヒラギノに近いフォントになっています。
ゴシック体に関してはWindowsデフォルトでは納得のいくフォントがなかったのでフリーフォントのCapelaをダウンロードして使いました。
かなりMacのヒラギノ角ゴProに近いフォントになっているのでオススメです。
Capelaのダウンロードはここで出来ます。
ダウンロードしたフォントをWordで使う時はこちらのサイトを参考にしてください。
フォントを変えると世界が変わりますよ
余白を使う
適度に余白を入れましょう。
スペースが生まれるので全体的に見た目がすっきりします。
見出しと本文でインデントを変える
このように本文と見出しでインデントを変えると見た目がすっきりします。
やり方も簡単です。
Wordでホームタブ>下図赤枠をクリックしてください
そこで”固定値”を選び、設定値を選びます。
私の場合は本文が15ポイント、見出し前後が22ポイントになるように設定しました。
フォントサイズは10.5ポイント以上を基本にする
申請書の作成要領には「10ポイント以上の文字で記入してください」とあります。
私の場合は基本的に10.5ポイントを使いました。
文字数をコンパクトにまとめられる方は理想的な11ポイントがおすすめです。
印刷して見るとわかりますが、文字サイズが大きい方が明らかに読みやすいです。
「10ポイントにしないと申請書に書ききれない」
という場合は書きすぎです。
文章を推敲してもっとシンプルなものにしましょう。
文字サイズを大きくしても (10.5 ポイント or 11 ポイント)、まとめられるくらいのコンパクトな文章を心がけてください。
冒頭には要約を入れる〜最初の1ページが勝負を決める
最初に想像した審査員のイメージを思い出してください。
おそらく、彼らは申請書を開いて、1ページ目を見た瞬間にある程度評価を下します。
その冒頭1ページ目に「この研究は○○をやっている」ということが数行でわかるような要約を入れると、忙しい審査員からすると非常にありがたいはずです。
もちろん、支離滅裂な要約を書いてはむしろマイナス評価になるので、推敲は怠らないようにしましょう。
これはDC2で採用された先輩が使っていたテクニックで、その方の申請書を見たときに要約があって凄く印象が良かったので真似してみました。
重要な箇所は太字や下線でハイライトする
重要な情報は目で追いやすいように強調しましょう。
適度に使えばとても見やすい申請書になります。
もっとうまく使えば、専門外の審査員の方には強調箇所だけ読めば概略を掴んでもらえるようにできます。
ただやり過ぎは逆効果なので、目安としては1ページに強調箇所は多くても10個くらいでしょう。
私の場合、下線や網掛けは少し煩わしく感じたので基本的に強調箇所はゴシック体+太字を使っていました。
数字を具体的に記述する
具体的な数字に直せるものは数字で記述しましょう。
具体性が出るのでぱっと見た時の信頼度が大きく変わってきます。
また、このテクニックの応用例が次のパターンです。
発表予定の論文は年月を具体的に文中に入れ込む
投稿予定の論文は業績欄に書けませんが、本文中に上のように書くことはできます。
ここでも見込みがあるのであれば具体的に月まで入れるとGoodです。
科研費審査の経験+億単位の研究費を獲得した経験がある教授から教えて頂いたテクニックです。
論理破綻をなくす
論理性は違和感なく申請書を読んでもらうためにも非常に重要です。
論理性に関しては注意すればかなり防げる部分なのでここはしっかり抑えましょう。
論理破綻をなくすだけでも差別化できる
意外に思うかもしれませんが、多くの申請書には何かしら論理破綻があります。
少なくとも、私が確認を頼まれた後輩の申請書や、ギリギリ評価点が足りずに落ちてしまった方の申請書にはほぼ必ず論理的におかしいと思う部分があります。
つまり、論理性を保った申請書を書くだけでも差別化に繋がるということになります。
論理破綻をなくすには、シンプルにとにかく何度も見直すのが有効ですので早めの準備が肝心です。
なぜその研究が重要なのかを明確にする
「あなたの研究がどのような意義を持つのか」
ここがとても重要なポイントです。
これを明確にしてください。
説明は上手くてもこうした意義付けが苦手な人が多い印象です。
正直なところ、テーマの内容にも依存する部分なので人によってはとても難しい部分です。
それでも世論の流れ的にも
「明らかに研究意義がわかるテーマ」
がどんどん支持されるようになっていくでしょう。
研究とは本来そういうものではない、と私は思いますが、やはり審査する方も人間ですので意義が明確化されている研究を採択する傾向があるように思います。
基礎研究ですぐに何かに役立つわけではないテーマでも、遠い未来に大きな貢献をすることはできる、というのは感覚ではわかると思いますのでそれをうまく言語化しましょう。
研究の独創性を伝える
「あなたの研究でアピールすべき独創性はどこにありますか?」
これは私のボスに繰り返し言われた言葉です。
流行のテーマに引っ張られて独創性の失われた研究にならないように気をつけましょう。
ホットな研究は必ずありますが今それに乗っかることが本当にあなたの研究の独創的なポイントでしょうか?
独創性を示す上で欠かせないポイントは先行研究の提示です。
先行研究はどんなことをやっていて、自分の研究ではどこが大きく異なるのか? どこにオリジナリティがあるのか?
このあたりを押させておく必要があります。
他の研究者がやっていないあなただけができる独創性を意識して申請書を作りましょう。
計画がうまく行かなかった時のバックアッププランも記述する
賛否両論あると思いますが、私の場合はバックアッププランを記述すべきと思います。
実際に研究計画を進めてみてわかりますが、予定通りには行かない部分もたくさん出てきます。
審査員は当然、我々よりも熟練した研究者のはずですからその点も良くわかっています。
「この申請者であれば計画通り行かなくても上手くやってくれそうだ」
という印象を与えることが重要です。
申請書に研究の根幹が揺るぎかねない結果が出た場合の、バックアッププランが明示されていれば少なくともその点をきっちり考慮しているという印象は与えられるはずです。
「本当に予想通り行くのか?」
と審査員に少しでも思われた場合、印象的には良くないと思います。
文字数が厳しいという場合は、うまくいったパターンとバックアッププランの両方をうまく図解として入れ込むといいと思います。
自己評価もオリジナリティを追求する
実質的な研究内容と関係のない項目だからといって油断してはいけません。
特に業績に自信がない人ほどこの項目は大きな差別化ポイントになります。
上の写真は私が実際に書いた自己評価です。
研究内容に関係するもの以外は公開します。
※自己評価の最後に書いてあるブログは学部生の頃に運営していていたもので、このブログとは異なります。
普遍的な研究能力・英語能力を示す以外にも出来るだけ他の人が書かないであろう自分の特色が出るように書いたつもりです。
何か意外性があって「お?」と思わせられるエピソードがうまく組み込みましょう。
それと、この時点では論文がなかったため、投稿予定の論文を具体的な年月にまで言及して十分結果を出せることをアピールしました。
実際、少しここに書いた月よりは送れましたがきちんとアクセプトまでこぎつけています。
イラストを活用する
研究概要は視覚的にわかるようにイラストを入れ込むと効果的です。
できるだけ自分で作ったオリジナルの研究イラストを書くと尚いいでしょう。
上のイラストは私が実際に作ったものです。
イラストはパワーポイントを使えば自分で作ることが出来ます。
Youtubeで検索すれば具体的なやり方が載っているので参考にしてください。
申請書が完成したら
同期、後輩、先生など他人を巻き込んで批評してもらう
私の場合、研究室は違う物の学振を申請する同期、先輩を含めたグループの中でお互いに申請書を添削しあう機会を作りました。
加えて、学生教育に熱心な若い准教授の先生が学振を出す学生を集めて定期的にお互いの申請書を批評しあう会を開いてくれました。
これが非常に効果的でした。
ドクターコースは人数が少なく寂しい思いをしがちなので、自分と同じ目標を持って頑張っている仲間達を持つメリットもあります。
学振の審査は必ずしもあなたのテーマに詳しい専門家の方が審査するとは限りません。
むしろ、大半は専門外でしょう。
こうした会を通じて専門外の先生や友人に申請書を見てもらうと、当たり前に使っている専門用語や文脈が全く通用しないことがあることに気づきます。
ですので、申請書が完成して、もし協力者を用意できる場合は自分の研究室の先生だけでなく、専門外の方にも見てもらうことをオススメします。
頂いたコメントは真摯に受け止める
ここで注意が必要なのは頂いたコメントには真摯に対応しましょう。
そこで頂いたコメントと同じ印象を審査員が持つ可能性が高いと思います。
専門外の方がわからなければ審査員もおそらくわかりません。
きちんと相手 (審査員)に合わせた申請書作りを心がけてましょう。
何度も、徹底的に修正する
下の画像は私の申請書の修正記録です。
私の場合、DC1申請の1月から書き始めて2月に初稿を作り、そこから直属の先生、研究室の他の先生方、他研究室の先生方、同期との数多くの修正を繰り返した結果、第67版までファイルが出来てしまいました。
提出が5月中旬なので、およそ4ヶ月近く申請書を書き続けていたことになります。
これだけの時間を費やしただけあって、申請書自体のクオリティには自信がありました。
徹底的に修正を繰り返すのが合格への近道です
申請する領域を選ぶ
領域選びは慎重に行いましょう。
疎かにされがちですが、実は非常に重要です。
なぜならほとんど自分のテーマに馴染みのない分野に出してしまえば審査員も訳のわからないまま採点してしまいます。
研究内容と審査区分がマッチしていないと評点は大幅に下がります。
私の先輩は、DC1申請時は領域Aに出したところ評点がもの凄く低かったそうですが、DC2申請時に領域Bに出したところ、ほぼ同じ内容にも関わらず面接なしで採用されたとのことでした。
領域Aではほとんど理解されない内容だったのでしょう。
この例のように領域を変えるだけでも採点が大きく変わる可能性もあるので申請領域の選択は慎重に行いましょう。
テーマにドンピシャの分野があるなら迷いなくそこでも良いかもしれませんが、例えば医学系などの場合、競争率が高くて通りにくい、なども状況もあるかもしれません。
担当の先生や、過去に申請した先輩がいるのであれば、相談して自分のテーマとの親和性、予想される競争率などを総合的に判断して決めることをおすすめします。
まとめー申請書が完成した後のチェックリスト
- 自分が審査員のつもり読んでみてどうか?
- 申請書の項目に従って書いているか?
- わかりにくい専門用語はないか?
- 論理破綻はないか?
- 研究はオリジナリティがあり面白いか?
- 計画がうまく行かなかった場合を記載しているか?
- 研究の概略図(イラスト)は入っているか?
- ぱっと見の印象は見やすいか?
- 入れ忘れた業績はないか?
- 自己評価はオリジナリティが出ているか?
面接について
面接免除の割合と面接合格率
私は書類審査だけで終わらず、二次審査にあたる面接にまわりました。
面接になった方はあともう一歩です。
また準備か・・・と思うかもしれませんがここを乗り切れば晴れて合格です。
結果から見ると私の分野では申請者が約250人、面接免除で合格した人が41人でした。
面接免除の割合が20%弱というところでしょうか。
面接に回った人が19人で、そこから合格した人が14人でした。
つまり面接では 70%ちょっとくらいの割合で合格できるということになります。
これはけっこう高い割合ですよね。
面接の対策方法
まずは学振から届く以下の資料を熟読しましょう。
内容に関してはまた少し変わっているかもしれないですが、大筋は変わらないでしょう。
上の写真は平成30年度採用時点の面接内容です
発表形式はパワーポイント or PDF
私の場合はMacだったので、Keynoteで作った資料をPDFに変換して持って行きました。
一番最初にやるべきことはこれらの発表資料の準備です。
私の場合、10月15日に一次審査(書類審査)の結果が届き、二次審査(面接)があったのが12月5日でした。
およそ2ヶ月の準備期間がありました。
しかし、時間に余裕があるからと油断せず、すぐに取りかかりましょう。
会場の様子
私の場合は以下のような部屋の配置でした。
発表を審査する審査員が4人、それに加えてスタッフらしき人たちも同席していました。
発表時間がとにかく短い
資料を見ればわかりますが発表時間はたったの4分です。
無駄なことを話している余裕はありません。
資料の「4. 説明・質疑応答」にも以下のように書いてあります。
面接審査は関連分科細目を組み合わせて審査を行いますので、次の事項について、ノートパソコンを用いてわかりやすく、簡潔・明瞭に説明してください。
当たり前のことですがこの資料に書いてある項目については「必ず」入れましょう。
上の文章を見る限り、おそらく項目ごとに採点されています。
過不足があるプレゼンは審査員に不親切です。
「必ず」項目を十分に満たしたスライドを用意しましょう。
発表時間が短いからといって油断してはいけません。
プレゼンは発表時間が短い方が難しいです。
スライド構成
発表自体はたったの4分です。
ここに先ほどの項目を全て満たして情報を入れ込む必要があります。
その上で、私が特に注意したのがきちんと「ストーリー」になっているかどうかです。
4分しかないからといって、情報だけ詰め込んで話されても審査員側からすると面白くもなんともありません。
きちんと流れのあるストーリーを作るというのは相手に「理解」してもらうだけでなく、「楽しんでもらう」という点でも重要です。
実際にプレゼンをする時は以下のことを意識すると良いと思います。
ここからは実際に私が作ったスライド構成について説明します。
1枚目:申請者の所属と名前、研究題目
これは全員が同じでしょう。
まず面接室に入ったら申請者の名前と研究課題名を述べよと書いてあるので1枚目のスライドに情報を入れます。
2枚目:普遍的な研究背景と研究課題の目的、研究意義
最初のスライドで審査員の心を掴みましょう。
ここで少しでも、
「この研究は面白そうだな」
と思わせることが出来れば最高です。そのために、
「なぜこの研究をするのか?」(研究背景)
「何がわかっていないから何をするのか?」(研究課題&研究目的)
「この研究を遂行することでどのようなインパクトがあるのか?」(研究意義)
の3点をできるだけ大きな枠組みで話すようにしましょう。
ここでも視覚に訴えるのは効果的で、全体像を示すようなイラストを一枚作ってそれを繰り返し他のスライドで使い回すとわかりやすい上に理解も深まります。
3枚目:研究業績
3枚目にスライドに研究業績を入れ込みました。
ここでもただ業績を羅列するのではなく、可能な限りストーリーに乗って話します。
具体的には、これまでの自分の研究から、2枚目の大きな枠組みで話した研究課題の解決に繋がるような結果を提示しながらそのデータを得るまでに参加した学会、投稿予定の論文などの情報を入れこみます。
研究業績はあくまでストーリーの「ついで」くらいの気持ちで示すと良いと思います。
4枚目:これからの「自分の」研究課題
ここでは2枚目の研究背景で示した「普遍的な研究課題」を「自分の研究課題」へと落とし込んでいきます。
普遍的なテーマ (大枠)→自分のテーマ (小さな枠)、という感じで段階的に自分の研究にフォーカスします。
5枚目:これからの自分の研究課題の解決策
4枚目で示した研究課題をどのように解決するかを示します。
ここではすでに自分の研究課題にフォーカスしているので、どのような着眼点で解決するのかをより具体的に話せるとよいと思います。
6枚目:これからの研究課題の特色
「○○がこの研究の特色です!!!」
と直接的にいわなくても自然と「この研究は独創性が高いな」と「思わせる」ようにすることが重要です。
これが出来れば差別化として最高だと思います
7枚目:想定している研究計画
最後に想定している全体の流れを「図解」で示し、最終的な目標を再度提示して締めくくりました。
箇条書きなどの文字の羅列は避け、可能な限り図解しましょう
必要事項を全て話したからといってそれで終わり、ではなく、あくまで「ストーリー」として終わるように心がけました。
100回練習しよう
スライドが完成したらとにかく練習です。
100回練習しましょう。
発表時間はたったの4分と非常に短いです。
少しのミスが命取りになります。
それを回避する一番の方法はとにかく練習することです。
原稿が用意された話しでも、自然に話しているかのように見せる事が重要です。
小手先のコツなんかよりも圧倒的な練習量が全てを上回ります。
4分×100回 = 400 分なので、だいたい7時間くらいあれば出来ますよね?
発表練習する際ですが、自分の発表をボイスレコーダーで録音してみることをオススメします。
最初は聞くに耐えないひどい発表をしていることに気がつくはずですが、修正を繰り返すほどに洗練されていきます。
私の経験では自分の発表を客観的に聞きながら、修正を繰り返して練習している人は全体の10%以下でしょう。
ただ練習するだけでなく、改善のサイクルも入れることで明らかにプレゼンレベルに差が付きます。
練習と改善のサイクルを徹底的に繰り返しましょう
質問対策をしよう
さて、発表が終わったからといってこの質疑応答を舐めてはいけません。
質疑応答は準備が全てといっても過言ではありません。
どんなことを聞かれるのかを予測し、準備しておく必要があります。
おそらくですが、審査員のうち一人か二人が自分の専門に近い方で、残りの方は専門外です。
私の質疑応答の時の経験から推測するに、質疑応答の際に一番最初に話し始めるのが一番自分の専門に近い方だと思っていいでしょう。
私の場合、入念なプレゼン準備のおかげで研究内容が正確に伝わったのか、その方に開口一番
「興味深い仮説を立てておられる」といって頂けたのでかなり場の雰囲気が柔らかくなりとてもやりやすかった記憶があります。
その後に続いた質問は、
- 想定している機構が一般的な○○にも全て当てはまると考えていますか?
- 研究計画に△△をやると書いてありますがすぐ出来そうだけどやってないんですか?
- 局所的な影響を考えているようですが、全身的な影響はないのですか?
といった研究内容に関する簡単な質問がほとんどでした。
おそらく単純に研究内容に関してであれば、普段から考えて研究している人であれば容易に答えられる質問ばかりだと思います。
研究計画に書いてあるけどまだやっていないのか?という質問は少し予想外でしたが、計画は計画でやっているはずもないので素直にやっていないと答えました。
わからないことはハッキリといいましょう。
下手に答えようとして支離滅裂なことを言ったり、沈黙が続いたりするのが一番まずいです。
「わからない」とハッキリ言えない理由の一つとしてやはり「準備不足」があります。
準備を十分出来ている場合は「あれだけ準備してわからないのだから仕方がない」
と考えることも出来ますし、この質問はどれだけ調べてもわからないことなので「わからない」と言おうを決めておけるかもしれません。
しかし、準備不足の場合は「もしかしたら調べればわかることなのかも」と不安になる結果、「わかりません」ということが難しくなります。
少しでも自分は不十分だと思うのであれば、予想できる質問に関しては関連論文を再度調べるなどして可能な限り準備しておきましょう。
質疑応答の準備の大枠としては、
- 研究課題の独創性はどこにあるのか?
- 他の研究にない強みはどこか?逆に弱みはどこか?弱みがあるとしたらどのように解決するのか?
- この研究は一人でやるのか?やれるのか?(共同研究者がいない場合)
- 研究計画がうまく行かないときはどうしますか?
などが挙げられると思います。
それと個人的に注意していたのは以下の質問です。
- 業績なくない?
これは友人から聞いた話ですが業績はほとんど無かったものの、書類内容が良く、面接にまでたどり着きましたが上記の質問をされて何も答えられず不採用になってしまった方がいるそうです。
推測になりますが、ここで明確にこれから「こういう論文を、いつまでに出せる予定なのでそのあたりは担保できます」といったように予定している論文について明確に話せていれば合格になった可能性も高いと思います。
業績がないのは仕方のないことですが、万が一聞かれたときに自信をもって答えられるようにしておきましょう。
繰り返しになりますが、質疑応答は準備が全てです。徹底的に対策しましょう
申請書を見てもらった人たちにプレゼンを見てもらおう
聞かれそうな質問が思いつかないという場合はとにかくたくさんの人にプレゼンを見てもらって些細なことでも質問してもらうようにすると細かいところまで網羅できると思います。
可能であれば指導教官だけでなく、申請書を見て頂いた方々にも発表を見てもらってください。
一度申請書に目を通しているという点で、視点は審査員に近いはずです。
私の場合は、合計で6人の先生と同期5人に見て頂くことができました。
出来るだけ複数回に分けて発表練習するようにし、受けた質問に応じて毎回少しずつ発表内容を修正しました。
それに加えて次の質問対策に繋げます。
発表前は前日入りがオススメ
会場地近くのホテルに前日入りする方がよいでしょう。
当日迷ったりしても困るので、可能なら前日に下見することをオススメします。
発表当日
直前に入ったカフェでは近くに座ったスーツの学生が発表練習らしきことをしていたのを覚えています。
おそらく同じ面接だった人でしょう。
同期の友人も同じ領域で面接だったので会場に行くと隣で話してできるだけリラックスするようにしていました。
小声で話していたら、係の人がここは好きにしゃべって良いですよ。リラックスしてください。と優しく話してくれたことが印象的でした。
順番が近くなると呼び出されます。
発表する部屋の外に椅子があるのでそこで待たされます。
前に待っている人が異常なくらい緊張していたのを見て、逆に私は気持ちが楽になりました。
最初はみんな学振の面接に来るくらいだからきっと凄い人たちが集まっているんだろうと思っていましたが、全体的な印象はみんな意外と普通でした。
発表自体はこれでもか、というくらい徹底的に準備したので緊張もほとんどしませんでした。
発表自体も質疑応答もかなり落ち着いて出来ました。
面接の合格率は70%くらいだった
面接があった12月5日から3週間後の12月26日に結果が開示されました。
朝学校で作業していたら結果開示のメールが来てもの凄くドキドキしながらリンクをクリックしたのをよく覚えています。
合格という表示を見たときは喜ぶと同時にホッとした記憶があります。
途中でも述べましたが。結果から見ると私の分野では面接に回った中から70%くらいが合格していました。
思ったより高確率ですよね。
私がしたように準備を重ねる人はほとんど居ないのでここで挙げたような徹底的な準備をするだけでも一歩先に進むことが出来ると思います。
面接に回ったときはまた頑張らなければいけないのか・・・という気持ちになりますが、行動あるのみです。頑張りましょう。
学振の準備は時給1万円以上のバイト!?
たった数分程度の発表で合否が決まってしまいますが、準備に費やすべき時間は膨大です。
とはいえ、DC1で学振に通ったとすると年間240万円の生活費+約100万円の研究費がもらえます。
3年間もらうことを考えるとおよそ1000万円にも及びます。
私が申請書の準備をしていたのが1月から5月の4ヶ月間なので、仮に毎日5時間は準備に費やしていたとすると単純計算で600時間です。
面接の準備を考えても、1000時間にはいかないでしょう。
1000万円もらえることを考えると時給はなんと1万円以上になるとも考えられます。
私は時折この計算をしては「お金をもらいながら準備をしているんだ」と自分に言い聞かせてモチベーションを保っていました。
合格率が応募者の30%くらいなので期待値で計算するとかなり下がりますが、金銭的に余裕が出ることで精神面でも余裕が出るという意味でリターンとしては十分なレベルだと思います。
よくある質問
ここではよく聞かれる質問をリストアップして自分なりの回答を書いておきます。
随時更新していくつもりです。
Q. いつから申請書を書き始めていましたか?
年始すぐ、1月上旬から本格的に書き始めました。
学振に出した先輩から早めに始める方がよいと念を押されたのでかなり早いほうだと思います。
周囲で合格している方は皆さん相当早くから準備をしたので早いに超したことはないでしょう。
Q. 1日にどのくらい申請書準備に時間を使っていましたか?
時期や日によりますが1日に最低でも3、4時間は使っていました。
そのほかの時間は修論執筆に使ったり、直近で参加する予定だった学会の準備をしていました。
実験はそれほど熱心にはしていなかったと思いますが、デスクワークばかりだと飽きてくるので気分転換を兼ねて時折実験もしていましたね。
これは反省点ですが、正直、一日に何時間も連続でやってもあまり効率が良くなかったと思っています。
なので可能な限り早く準備を始めて、1時間くらいの小分けの時間で集中してやる回数を増やす方がアイデアも生まれやすく良いと思います。
こうした作業効率化においては下記の記事を参考にしてください。
Q. 後悔していること、やっておけば良かったと思うことはありますか?
論文を書くことですね。
業績としてやはり論文は強力ですし、論文を書くこと自体が最高の実戦経験になるので、この過程で文章力やロジックが鍛えられて申請書作成にも有利に働きます。
私はM2になるまではまさか自分が博士に進むなんて思いもしなかったこともあり、論文を書くという発想も全くありませんでした。
上のツイートにもあるように論文を書くことをゴールに設定しておくと行き当たりばったりの実験ではなく、きちんとデザインされた研究をするようになるので、自然と論文を書ける確率も上がっていきます。
論文を書くこと自体もの凄く大変で、必ずしも狙って書けるものでもありませんが、先を見越してゴールを設定しておくぶんには正直得しかないです。
私にはこの長期的な視点が足りていなかったので、早めに長期的な見方が出来るようになると良いと思います。
学部生であろうと最初から論文を書くことを意識して研究を進めてみましょう。
Q. 申請書で、これからの研究とこれまでの研究に関連がなくてもいいですか?
申請書の書き方でこの質問よく受けますが、結論から言うと
無理やりにでも関連性を作るほうがいいと思います。
途中で大学を変えた方やテーマが変わった方によくある問題だと思います。
特に、大学を変えた場合に関連性を繋がりを作るのが難しいというのも理解できますが、
これからの研究とこれまでの研究に全く関連がないと、読み手(審査員)は混乱します。
更に、申請書の「これからの研究計画」の項目には、
2.(これまでの研究)で述べた研究状況を踏まえ〜
と明記されています。
これは無視すべきでないでしょう。
ですので、
- これまでの研究成果を基礎とし〜
- これまでの研究成果を応用し〜
- これまでの○○という研究成果から着想を得て〜
といった文句を活用して無理矢理にでもこれまでの研究とこれからの研究をリンクさせるべきです。
また、文字数が厳しいかと思いますが少し丁寧に背景を説明し直すことも必要と思います。
このあたりは、もし関連性がなく読み手が混乱するようであれば他の方に読んでもらえば指摘を受けるはずですので、読んでもらって無理なく理解できるようになるまで書き方を工夫するといいと思います。
Q. 参考になる書籍やサイトはある?
申請書の作り方であれば、下記の
「学振申請書の書き方とコツ DC/PD獲得を目指す若者へ (KS科学一般書)」
が購入必須レベルです。
唯一といって良いくらいの学振申請書の書き方に特化した書籍です。
私が申請書で工夫したのはほぼこの本の内容をアレンジしたものです。
こちらのサイトでも大上さんのスライドショーによる講演資料が見れます。
スライドデザインに関する本であれば、記事の途中でも紹介しましたが、
「伝わるデザインの基本 増補改訂版 よい資料を作るためのレイアウトのルール」
が一番参考になります。
今でも何度も読み返して参考にしています。
それと、この方の記事は文章を洗練させるという点で、他のサイトにはない独自性のある視点で書いてあり大変お世話になりました。
また、プレゼンに関する本であれば以下を購入することを強くオススメします。
プレゼンは練習で上手くなるのであって、決して才能だけではないことがよくわかります。
具体的な練習方法も載っているのでぜひ読んでみてください。
学部生が今からできること
博士課程に進む気がなくても研究に力を入れておいて損はないと思います。
その上でどのように研究を進めるかが重要です。
その点で、論文を書く前提で研究をすることがとても大切だと思います。
皆さんもご存知のように特別研究員に採用されるためには業績が当然重要になります。
特に英語論文が採択されているかはとても重要な項目になります。
私の大学では毎年学振申請者のためのセミナーがあり、学振の審査員をした経験のある講師が講演してくれます。
その方が遠慮がちでしたが、「論文を持っていなくても採択される学生はいるが、やはり論文を持っている人の方が採択率は高い」と仰っていました。
実際、採択された私の同期や先輩は論文を業績として持っている人ばかりでした。
具体的な評価方法は不明ですが、共著論文があるだけでもかなり違うと聞いたこともあります。
共同研究がある場合には積極的に貢献していくといいかもしれませんね。
もちろん、ボスの意向や研究室のシステム、テーマに依存する部分もあるため、
論文を持っている=学生が優秀である
が必ずしも成り立つわけではありません。
ですが、学振の費用は国民の税金から捻出しているわけですから、ある程度成果を出せることが担保されていることが大切です。
審査員の目線に立ってみればわかるかもしれませんが、
少なくとも、外部の人に「なぜ選んだの?」と言われたときに論文という明確なアウトプットがある、というのは大きいですよね。
つまり、その学生を選出する理由の正当化になるわけです。
なので、「論文の有無で決めるなんて」と文句を言う前に書きましょう。
そもそも、査読に耐えうる論文を書く、という作業はとても大変なものです。
有名な雑誌でないとしても、投稿までの試行錯誤や、レビュワーに対する応答、追加実験、本文修正は非常に骨の折れる作業です。
自分が論文を書いてみて初めてわかることですが、いざやってみると論文を持っていることがある程度その学生の能力を担保できるという点は非常に納得できます。
また、博士に進む気がない方でも就活や奨学金免除で有利になる場合が大いにあります。
論文を書いた人にしかわからない苦労を誰よりも知っているはずなので、このプロセスをうまく話せれば必ず就活でも生かせますよ。
まとめ
徹底的な準備と対策が最もシンプルで効果的な方法です。
その上で今回述べたような対策方法を参考にしながら試行錯誤するのが良いと思います。
何事も試行回数を増やした上で修正を重ねるのが一番です。
もちろん学振に通ること自体も大切ですが、仮に通らなかったとしても申請書を書き上げる過程が自分のこれまでの研究内容やこれからの研究計画の展望の整理に繋がります。
出来るところからチャレンジです!
何か学振に関して相談したいことなどがあればTwitterをやっているので、こちらのアカウント(@min0nmin0n)にDMでもして頂ければ可能な限りお答えします!気軽にご連絡ください!良い研究ライフを!
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