こんにちは、みのんです。
研究において、データを集めることと同じくらい「論文を読むこと」はとても重要です。
ですが、「なぜ」重要なのか、「どのように」読むのかを教えてくれる人はあまりいません。
理由や方法が分からなければモチベーションも上がらないですよね。
実際、私の周りを見渡してみると(環境にも寄りますが)修士の学生でも週に1報論文を読んでいれば多い方で、積極的に論文を読もうとしている人は少ない印象です。
この記事では「なぜ」論文を読むことが大切なのか、について私の考えをまとめました。
「どのように」に関しては別の記事でまとめようと思います。
この記事は特に、研究室に配属された学部生の方に読んで頂ければ今後の参考になるかと思います。
それでは下記よりご覧ください。
よくある2つの「勘違い」
論文を読むことが「なぜ大切なのか」を説明する前に、少し思い返してみてください。
- 「指導教官とディスカッションしても、何を言っているか理解できない」
- 「これから研究をどうやって進めればいいかわからない」
- 「新しくデータが得られたがうまく理由を説明できない」
- 「質疑応答でいつもうまく答えられない」
- 「ゼミで質問が全く思いつかない」
おそらく、多くの方が1つは経験したことがあるのではないでしょうか。
こうした経験をする度に、多くの人は
自分は理解力が足りない
アイデアが浮かばない
と自分の頭の回転が悪い、などと落ち込んでしまう方も居られるかもしれません。
実は、これは多くの方が陥る大きな「2つの勘違い」です。
もしかしたら、これらの問題は論文を大量に読むことでかなり解決できる可能性があります。
理解力が足りないという勘違い
多くの方が思う「理解力が足りない」は本当に「理解力」の問題でしょうか?
例えば、
I have pneumonoultramicroscopicsilicovolcanoconiosis.
という英文があったとします。
意味が理解できますか?
ほとんどの方は理解できないかと思います(わかるという方はすみません)。
“pneumonoultramicroscopicsilicovolcanoconiosis” は辞書で最も長い単語で、
「火山灰などの粉塵等を吸い込んでしまった結果生じる肺の病気」を指すそうです。
この単語の意味がわからないと、上の文章を理解するのは非常に難しいです。
推測が出来るとしても、かなりボヤッとしたものになるはずです。
そうした推測は確かに大切ですが、既に知っている人と比べれば、理解スピードに圧倒的に遅れを取ります。
つまり、理解力云々を語る前に、知識が足りなければ理解することの難易度が跳ね上がるということです。
何が言いたいかというと、「理解力が足りない」はもしかすると「知識が足りない」のではないかということです。
そう思ってツイートしたのが以下の内容です。
昔は「地頭の良さ」なんて言葉に惑わされて、知識ゼロから何かを推測することが大切なんだと思ったこともありました。でも、知識があるからこそ速く、かつ高度な推測が生まれることに気が付いてからは、「地頭の良さ」なんて発想は捨てました。たくさん論文を読むことを勧めるのはこういった理由です
アイデアがゼロから生まれるという勘違い
もう一つある勘違いが、「アイデアはゼロから生まれる」という勘違いです。
「アイデアは既存知識の組み合わせ」という事実を知らないまま研究を進めると、ゼロからアイデアを捻り出す「発想力」が大切と勘違いしてしまった結果、平凡な考えしか思いつかず落ち込んでしまう可能性が高い。研究でいえば論文が既存知識の宝庫だけど、意外とこういう考え方を教えてくれる人は少ない
つまり、アイデアとは、
新しく何かを創る「創造」ではなく、既存知識を「組み合わせる」ことで生まれるということです。
アイデアは「既存要素の組み合わせ」以外の何ものでもありません。
これを良く覚えておいてください。
「知識」が足りない状態でいくらアイデアを考えようとしても、浮かばないのは当然なんです。
思いつき程度のアイデアは既に誰かがやっている
そもそも、何の予備知識もなしに思いつき程度で浮かんだアイデアは、大抵は既に誰かがやっています。
ある程度知識がある状態で、それらの既存要素を組み合わせるからこそ新しいアイデアが生まれるわけです。
では、研究において「既存要素」をどこで手に入れるのでしょうか?
それが「論文」です。
こういった考え方を教えてくれる人がなかなか居ないのも論文を読む人が少ない理由なのかなと思います。
理解力不足は知識不足
アイデア不足は知識不足
とにかく、この二点だけでいいです。
常に頭の片隅に置いておけると良いでしょう。
論文は既存知識の宝庫
この記事でいう「論文」は英語の原著論文のことを指しています。
原著論文とは簡単にいうと、著者らが独自に行った研究に基づく論文です。
「何が新しくわかったのか」を報告するのはこの原著論文になります。
一方で、レビュー論文と呼ばれる物は、多数の原著論文を網羅的に集めてまとめた論文になります。
これは「今何がわかっているのか」を整理するのが主な目的と考えて良いと思います。
レビューは知識を取り入れる分には極めて有用ですが、原著論文では仮説を立てる→検証する、の流れが記述されているので、知識だけでなく、「考え方」まで学ぶことが出来る点で優れていると考えます。
また、日本語の論文もありますが、全世界で広く出版されるのは英語の原著論文です。母数が多いので情報量も圧倒的ですし、最新情報は基本的に英語の方が速いです。
ですので、最新の情報を手に入れる、という意味では英語論文が優れていると考えられます。
自分の考えは「他者の意見+α」で十分
アイデアは知識から生まれるという考え方を応用して論文を読むようにしておくと、「自分の考え」も比較的簡単に作ることができます。
何かしらの実験データが出たときに、似た様な結果はないか、相反する結果はないか、何か有用な考察をしている論文はないか調査する癖を付けておきましょう。
これをしておくことで、
「自分はこう思います。実際に、○○の論文でもこう言っています」
といった感じで話すと、聞いている方からするとその人のオリジナルの考えのように見えますし、同じ事を主張している人が居ることを主張することで、信頼性も上げることが出来ます。
こういった感じで、オリジナルのアイデアをゼロから生み出そうとせずに、うまく既存の論文の情報を利用して付け足したり、組み合わせることで「自分の考え」を述べられるだけでも初めは上出来です。
論文の知識を使って「組み合わせ」を考えると記憶が定着しやすい
よく、なんでそんなに読んだ論文の内容を覚えているのか?
と聞かれることがあります。
正直にいって、私はあまり記憶力が良い方ではありません。
では、なぜそんなに読んだ論文の内容を覚えていられるかというと、
論文で得た知識を「使って」アイデアを(知識の組み合わせ)を作る、という行為をいつもやっているからです。
これは完全に能動的な学びですよね。
論文を読んで終わり、ではこうはいきません。
しかも、「これとこれはうまく組み合わせられそうだな」とワクワクしながら、そのたびに論文の内容が自然と反芻されるので、記憶にも残りやすくなっているわけです。
ですので、読んだ論文の内容をできるだけ記憶に留めておきたいという方は、読みっぱなしで終わるのでなく、他に持っている既存知識と「組み合わせを作る」ことを意識してみると良いかもしれません。
加えて、読んだ論文の内容は概要を数行にメモして、文献情報とともに記録しています。
今はGoogle document を使っていますが、Evernote なんかもおすすめです。
このメモの方法もいずれ別の記事にまとめようと思います。
論文は「誰か」の「考え方」を学ぶ場でもある
また、論文は単なる「知識」を得る媒体でなく、実験の進め方や仮説を立てるまでの「考え方」を学ぶことが出来ることが重要な点です。
単なる知識で終わるのであれば、レビューでも良いですからね。
こうした考え方は「知識の組み合わせ方」を学ぶといったも良いかもしれません。
アイデアは「既存知識の組み合わせ」以外の何者でもない、と話しました。
つまり、既存知識を十分に身につけたあとは、「組み合わせを見つける力」がアイデアを作るために重要になります。
それをどうやって身につけるかと言われると、とにかく知識を身につけて何度も試すという他ないのですが、論文を読むことで面白い組み合わせをしている研究がたくさんあることに気がつけるようになれば、かなり成長が早くなると思います。
その組み合わせのパターンをうまく見つけて応用できるようになれば、アイデアの量・質ともに上がっていくでしょう。
論文を読む時間を作ろう
この記事では「なぜ」論文を読むことが大切なのか、私なりの考えを紹介しました。
繰り返しますが、まずは以下の2点だけ抑えておきましょう。
理解力不足は知識不足
アイデア不足は知識不足
その上で、研究において知識を身につけるには論文が知識の宝庫だということを覚えておいてください。
これが、私が考える「論文を読む理由」です。
以下のツイートで紹介したように、たまには、実験を止めてでもまとまった時間を作って論文を読む時間を作ることをおすすめします。
研究室に入ってデータがまとまり始めた時こそ一旦落ち着きましょう。実験を進めたい気持ちをぐっと堪えて、集まったデータを支持する論文、相反する論文を1週間くらい時間を作って集中的に調べる時間を作ります。こうしておくと無駄な実験を省けたり、予想外のデータが出たときの対処が速くなります
特に「予想外のデータ」が得られた時に予め大量に論文をインプットしておくと、「ピーン」とくる物があります。読んだ当初は説明出来なかったものが、「あれはそういうことだったのか」と合点がいく確率が確実に上がります。何か自分のミスを疑ったりと疑心暗鬼に陥ることもあるのでインプットは大切
今回の記事が少しでも論文を読む動機になれば幸いです。
ただ、特に学部生の方にとって、論文を読むにはそれなりに時間が掛かりますよね。
次回の記事では、論文の読み方について質問を受けることも最近増えてきたので、「どのように」論文を読むのかについて、紹介していきたいと思います。
そちらも合わせてご覧頂ければと思います。
コメント
学部生です。他の人の発表を聴いても質問が思い浮かばず,先生とディスカッションしても何を言われているのか理解できないことが多く,自分は理解力が無いのだと苦しんでいましたが,これは知識不足であると知り,少し救われました。論文をたくさん読むよう心掛け,巨人の肩に乗って前に進んでいきたいと思います。次回も楽しみにしています。
かもすさん、とても嬉しいコメントありがとうございます。学部生の段階で「知識」を増やす必要があることに気がつけただけでも、大きな一歩だと思います。これからは、具体的な論文の読み方、読んだ論文を整理してメモしておく方法、仮説やアイデアの作り方、先生とディスカッションする際にしておくべきこと、などの記事を公開予定です。参考にして頂けると良いかと思います。かもすさんのように、少しでも役に立ったと仰ってくれるコメントはとても励みになります。体調には気をつけて、頑張ってくださいね。