こんにちは、みのんです (@min0nmin0n)。
この記事では、「生物系の博士学生がメーカー研究職の内定を得るまでの過程」を紹介します。
現在は生物系の博士課程3年目で、先日就活を終えて来年からメーカー研究職に就くことになりました。
僕が志望していた業界は一般的には博士をほとんど採用しません。
最近でこそ、製薬企業や化学メーカーで博士の採用に積極的で、採用スケジュールも修士とは明確に分けられる企業も増えてきていますが、僕が志望していた企業群ではそういった博士を特別扱いする企業はありませんでした。
人数の割合で言えば、博士の数は全体の10%にも満たないでしょう。
こうした企業に博士で入社する情報は貴重だと思いますし、採用活動は修士学生と全く同じシステムで行われたので、博士学生だけでなく、修士からこうしたメーカー研究職を志望する学生の参考にもなると思い、僕の体験談を書いていこうと思います。
この記事が役に立つ人
僕は博士まで進学したこともあり基礎研究職がやりたかったので、必然的に基礎研究に手を出す余力がある大手企業に限定されました。
ただ、業界的には博士を重視するような業界ではなかったことから、基本的には修士の方と同じ土俵での選考でした。
そのことを考慮すると、以下の様な方の役に立つのではないかと思います。
- 基礎研究職を志して就職活動をする修士・博士学生
業界としては特に限定しませんが、生物系専攻の方が受けるような業界を想像して頂ければと思います。
2020/12/1 追記
光栄にもアカリク様が主催する「アカリク~大学院生(修士・博士)・ポスドクの就活とキャリア~ Advent Calendar 2020 」
という大学院生(修士・博士)とポスドクの方向けに特化した記事が12/1-25に渡って順に掲載されるイベントに掲載させて頂きました。
企業の基礎研究職を目指して
企業就職へ向けての行動は、博士進学後すぐに始めました。
研究がやりたくて博士に進学したものの、アカデミア一本に進路を絞るのは非常にリスクが高く、何も行動しなければ卒業直前に就職の事で焦る可能性が高いと思ったためです。
実際、現行の制度ではポスドクと企業就職のタイミングは被っていて(海外に行かれる方はまた違うかもしれませんが詳しくありません)、博士2年目までにどちらか一方に絞っておかないと後々苦しむ可能性が高いです。
僕の場合は企業就職を選び、博士号を活かしやすいように基礎研究職をメインターゲットに絞っていました。
企業との交流イベントでのカルチャーショック
インターンシップなどに参加するほどの余裕はなかったため、大学が主催する企業との就活イベントに参加するようにしていました。
数ヶ月に一回の頻度で開催され、博士採用に意欲がある企業10-20社と博士学生30人程度が集まり、企業からの会社説明会、博士学生の研究内容等のポスター発表を通して交流をする1 dayのイベントです。
このイベントでは企業との交流だけでなく、他学部の博士学生とも交流が生まれる非常に有意義なイベントでした。
例えば、僕が行っていた「大学らしい(偏見)」基礎的な研究とは異なり、工学部や理学部、医学部等の研究室では、プロダクトに直結するような非常に応用性の高い研究を行っており、カルチャーショックを受けると同時に、非常に刺激的な交流でした。
その研究から「何が出来るのか?」を重要視する企業
そうした学生と交流しつつ、更に驚いた事はポスターセッションで感じた大学と企業の研究に対する考え方の違いです。
大学では既存研究と、その分野の課題のギャップを少しでも埋めるようなオリジナリティのある研究が重要ですし「面白ければ良い」がある程度許される環境です。
ところが、企業の方は「で、その研究から何が出来るようになったの?」といった部分をとにかく気にします。
もちろん全ての企業がそうという訳ではなく基礎研究を大事にしている製薬企業や一部の他メーカーでは、とにかく研究力を見る上でアカデミアに近い考え方のところもあります。
つまり、「その研究で明らかにした何か、を使ってどんな事が出来るのか?」のアウトプットを非常に重要視するわけです。
これは、生物系の研究をされている学生ならよく分かると思いますが、そんなに簡単に「その研究から何が出来るか」を胸を張って言えません。
僕の場合でいえば、細胞や動物実験レベルの研究が多いため、それが実際にヒトでどうなるか、なんてことは遠い先のことだからです。
そういった意味で、先ほどの応用研究をされているような方に比べると、生物系の学生は不利なのかもしれません。
事実、ポスターセッションでは先ほどご紹介したような応用的な研究をやっている学生に人気が集中していました。
とはいえ、就活を終えて言えることは、あくまで重要なのは「そこまでイメージできているか」「そのイメージをきちんと相手に伝えて納得させられるか」ということです。
これは企業ではある研究テーマを進めるにあたって、上のエライ人たちに「この研究をやるのでお金を出してください」というプレゼンをする時に重要だから、と僕は考えて対応するようにしていました。
やっぱり専門領域のマッチングは重要
僕は発表の上手さなどに関しては常に高い評価を頂いていましたが、やはり専門領域がマッチしない企業では、比較的冷ややかな反応でした。
博士では論理的思考能力や発表能力、文章力といった力が身につきますが、やはり基礎研究という枠を考えると採用側の心情としてはやはり「専門性がある程度マッチする人をとりたい」という部分を強く感じました。
ただ、この「専門性」というのは自分が扱っているテーマの非常に狭い領域(分子Xを扱っているとか)の話ではなく、薬学とか有機化学とか広いカテゴリでの意味ですので、「自分のテーマと合致する企業なんてないよ」と悲観する必要はないと思います。
例えば「生物系の僕が食品や飲料系、化粧品のメーカーなどからは非常に高い評価を得ていても、化学系メーカーを受けた場合にはあまり評価してもらえない」
といったことが起こり得るよ、という意味であって
「ドンピシャのテーマでないと評価されない」
という意味ではありません。
これは特に専門が狭くなってくる博士の方に顕著なのかもしれませんが、周囲の方を見ていても実力はあるのにマッチングが悪いとあまり評価して貰えない場合が多々あると感じました。
そういった意味で、軸となる業界、志望企業群を定めるのは「ミスマッチで全落ち」なんていう事態を避けるためにも非常に重要です。
自己分析【幹を作り、ミスマッチを防ぐ】
こうした企業とのマッチングの重要性を痛感した僕は自己分析を通して就活の軸をきっちり定めようと考えました。
その上で、全ての学生におすすめしたい書籍がこちらです。
タイトルだけ見るとちょっと宗教っぽいですが、中身は至極まっとうです。
この書籍のコンセプトは「自分が成し遂げたい【人生の目的】を達成する手段の1つとして【就職】する」というものです。
就職自体が目的化しがちな就活において、これが出来ると大きく周りと差別化できます。
就活ではその学生の思考の「一貫性」を見るためになぜその業界なのか、なぜその企業なのか、職種なのか、といった深掘りが頻繁に行われます。
この人生の目的を据えることで、「特定の企業に入ること」を目的にするのではなく、「人生の目的」を達成するために「その企業で働くこと」が「手段」になる、という先を見据え、差別化した考え方を持つ事が出来ます。
周りの学生とは一線を画した志望動機ができあがるでしょうし、どんなことがやりたいのか?といったことも見えてきます。
やりたいことが見えてくると、自然と志望する業界・企業も定まってきます。
こうしてミスマッチを防ぎ、就活もスムーズに進むようになります。
特に博士が必ず聞かれる「なぜアカデミアに残らないのか?」に対しても
「アカデミアよりも企業の方が安定しているから」
といった安直な回答(気持ちはわかりますが、ベストな回答ではないです)は生まれず、「自分の夢である○○を達成する手段として企業就職を選んだ」といった回答につながります。
本書ではそうした「人生の目的」を見つけるための方法が簡潔に書かれています。
Amazon Kindle Unlimitedに入れば一ヶ月は無料で閲覧できますし、気に入らなければ解除すればいいだけです。
この人生の目的論に沿った自己分析の詳しい方法についての詳細は本書を見て頂きたいのですが、ここでは簡単に紹介しておきます。
- 普段から新聞に目を通しておく(日経新聞推奨)
- 白紙の紙を50枚用意
- 過去のあらゆる事例を書きなぐっていく(なぜこの大学を選んだ?なぜこの研究室?なぜあの友人達と仲が良い?、等)
- 2.で挙げた事象の中から共通項を探し、共通のグループとして紙を纏める
- 共通項から「人生の目的」になりえる「自分のやりたいこと」の仮説を複数作っていく
- 複数の仮説の中から、自分の人生の目的になりえる、一番しっくりくるモノを一文で簡潔に纏める(ex.病気のない世界を創る)
- その「人生の目的」を持った過程を論理的に説明できるか、友人に評価してもらう
「なぜ新聞を読まなければいけないのか?」
「1人でやっちゃ駄目なの?」
こうした疑問がたくさん浮かぶとは思いますが、全て説明していてはきりがないので割愛します。
とにかく本書を読んでみてください。
例えば、例として挙げた「病気のない世界を創る」という人生の目的が見つかったとしましょう。
事前に病気を予測し、予防すれば病気のない世界を創れるかもしれませんね。
すると、予防診断を扱うバイオテック企業や、医療機器を扱う企業なんかは候補に挙がりますね。
また、健康食品を扱ったり、健康促進サービスを扱う食品企業なんかも候補に挙がります。
逆に、病気になってしまった後に薬で治療をする製薬企業はあまり向いていなさそうです。
こういった感じで、自分の人生の目的に応じて業界や企業が自然と定まってきます。
僕はこうした過程を経て、先述したように自分の専門領域とマッチする企業を特に絞っていきました。
もちろん完全にマッチする企業だけでなく、人生の目的に少しでも合致する企業であれば数社は応募していましたが、7−8割は人生の目的と自分の専門領域の両方がマッチする企業にしていました。
これは自分の「やりたい」と「出来る」のバランスを取った結果ですね。
結果論ですが、両方がマッチする企業の方が圧倒的に高い評価を受けやすかったです。
企業研究【相手を知る】
こうした自己分析を終え、自分の人生の目的を見つけた後はその目的を達成する上で手段になり得る業界・企業に焦点を当て、詳しい企業研究を始めました。
ちなみに僕の場合は普段から新聞を読んでいたり、上記の就活イベントで多様な業界の企業の方と交流があったおかげで、自分の人生の目的を達成する上で手段になり得そうな業界が自然と決まっていました。
こうした感覚は考えてもわからないと思うので、インターンシップやOB・OG訪問の数をこなして経験値を積み重ねていくことが重要だと思います。
さて、企業研究といっても「どうやったらいいかわからない」という方は多いんじゃないでしょうか。
ざっくり説明すると、調べる対象は以下の通りで、「過去」の情報と「未来」の情報に大別でき、赤字が特に役に立ったものです。
新聞は普段から読んで広範囲な知識の基盤を持っておくものとして、特定の企業を調べたい場合は有価証券報告書を読みます。
*有価証券報告書は膨大なページ数で、どこを見たら良いかわからないと思うのでまた「企業研究の方法」として別記事でまとめます。
有価証券報告書まで読んでいれば大したものなんですが、有価証券報告書はあくまで過去(これまでやってきた研究など)の情報が載っているだけです。
自分がこれから貢献するのは未来の話ですから、過去にやってきた情報より「これから何をするのか」が知りたいですよね。
そんな時に役立つのが「中期経営計画」です。
この中期経営計画に基づいて「自分が貢献出来る部分」を探していくわけです。
この中期経営計画に記載さえている企業としての方向性が自分の「人生の目的」と合致しているかも確認できます。
加えて、基礎研究では共同研究の情報なんかも知っているといいかもしれません。
「特定の企業名+共同研究」なんかで検索すると情報が色々出てくるはずです。
こうした共同研究のプロジェクト名や共同研究先の企業や大学名を覚えておいて、面接でさらっと一言加えるだけでも「志望度の高さ」をアピール出来るので重要です。
この辺の企業研究の詳しい方法は説明したいことが山ほどあるので、また別記事でまとめます。
ES執筆【早めに書く】
こうした企業研究と並行して、昨年のESをもとに同じ項目を想定して書きためていきました。
本番の〆切直前に一気に書いていてはとても間に合わないと思ったからです。
特に僕は志望企業の関係で、修士の学生と同じ土俵で戦うことになることがわかっていたのでとにかく修士の方とは差別化できるように気を付けました。
- 文章のロジック
- 定量的な表現
- ビジネス的視点を入れる(研究のアウトプットとして)
- 目的意識を持った(意図を持った)エピソード
このように、意味が分かるだけではなく、インパクトを持ったESの内容になるようにしました。
第一志望群だった企業のES通過率は100%で、多くの面接で「こういった定量的なアウトプットの書き方をする学生はいないので特に目を惹いた」と言って頂きました。
ここは良い意味で「博士らしさ」を見せることが出来たかな、と思います。
ちなみに、ウェブテストの勉強もコツコツと行っておきました。
たかがテストと思って甘く見ると足きりで落とされる可能性もあるので、博士学生とはいえ修士と同様に抜かりなく準備しておいた方がいいと思います。
書店で売っているようなテスト形式にあった問題集を一通りやればいいと思います。
SPIやTG-webなど企業によって形式が違ったりして大変ですが、数をこなしていくうちに出来るようになると思います。
面接対策【準備と振り返りで効率良く】
さて、ESが通過した後は面接です。
面接でも徹底的な準備と対策を行いました。
- 企業研究の復習(上述)
- 想定質問をリストアップ
- 想定質問に対する回答を用意
- 定型質問(自己紹介、学生時代に力を入れたこと、研究概要など)は反復練習
- 面接後に振り返り(反省と次回の面接に向けた改善)
準備はもちろん、面接後の復習が凄く効果的でした。
このあたりも長くなりすぎるので、別記事でまとめます。
無事、第一志望の企業から内々定を頂いた
新型コロナウイルスの影響で全ての面接がWeb面接に変わるという、慣れない環境でしたが無事内々定を頂く事が出来ました。
連絡を頂いた後にこちらからお願いをして、4人ほどの先輩社員の方々にお話を伺わせて頂きました。
主に勤務地や給料、福利厚生、想定される仕事内容、自分が想定する競合他社との比較、職場の雰囲気等、最終判断を下すための判断材料を集めました。
それらを総合的に判断した上で面接で感じた相性の良さ等も勘案し、この企業にする事に決めました。
この時点で他の企業の選考がいくつか残っていたものの全て辞退し、就職活動を終えました。
久しぶりに博士の研究活動にのみ集中できる状況に戻り、ほっとしています。
おわりに【博士は就活で不利に働くのか?】
修士の学生を主に採用する企業では
「博士を持っている事が不利に働くのではないか」
「博士は採用してくれないのではないか」
という大きな不安を持ちながら就活をしました。
しかし、就活を終えた今、率直な感想を述べるとすると
たしかに「修士とは求められる能力が一段階上がる」印象はあるものの、
「博士だから就活が不利になることはない」と僕は感じました。
不利になるとすれば、それは「博士はアカデミア」という意識や、単純に研究活動で就活への時間がとれない事が原因で起こる「企業就職への準備不足」からくるものかもしれません。
そうした事態を避けるためにも就職活動の準備は可能な限り早めに始めることをオススメします。
可能ならインターンシップにも参加した方がいいですし、OB・OG訪問も自分で調べるだけでは絶対に手に入らないような業界情報などを得ることができるので、積極的にすることをオススメします。
これらを本番前にこなしておくことで、予めたくさん失敗することができ、本番では同じ失敗はもうしないでしょう。
「博士は研究活動に集中しなければ」という意見ももっともですが、研究活動をこなしながら就職活動に一日の30分くらいは充てる事は出来ると思います。
それらの積み重ねが本番で効いてくると思います。
もう一つ、問題になるとすれば「博士は扱いづらい」という企業の方がもつ印象でしょうか。
先ほど「相手は博士であることを意に介していない」と書きましたが、相手の様子も見ずに、とにかく専門知識を前面に出してアピールするようなやり方だったりすれば、「これだから博士は」と思われかねないと思います。
特に博士採用に積極的でない企業では「いつも以上に謙虚に」いきましょう。
面接官の多くは修士の方がほとんどかもしれません。
あまり「博士がすごい」みたいな態度は出さずに、あくまで謙虚な姿勢で臨むことをおすすめします。
さて、今回書き切れなかった部分はまた別記事で纏めますが、他にも「こういったことが聞きたい」という事があればTwitter (@min0nmin0n) のDMで連絡して頂ければ対応できると思います。
企業研究職を目指す方にとってこの記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
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